妄想男子

日々思うことを気ままに。

未知との遭遇と自己防衛

最近一年が過ぎるのが妙に早い。

なんか不思議。

”あけおめ”を連発していたお正月が

つい昨日のことのよう。

私も歳をとったもんだね。

 

今年は秋なんてあったっけ?というくらい

夏から秋を飛び越えて冬になっちゃった。

 

冬支度も早々に

外では白い息を吐く人が

マフラーを巻いて顔を埋めている。

 

この時期に外を歩いていると

私は、あの時のことを思い出す。

 

それは一昨年のちょうど今頃。

その年は天候が不安定で

二日に一度は雨が降っていた。

お陰で気温は下がる一方。

私は暖冬なんて言葉にすっかり騙されて

肩を震わせながら歩いていた。

 

その時、私はまだ車を持っていなくて

徒歩で仕事に通っていた。

 

それは、仕事が終わって帰る途中のこと。

私は帰る道をショートカットして早く家に帰ろうとしていた。

大通りから横道に入って住宅街の間を抜けていく。

寝静まった街はとても静かだ。

聞こえるのは私の吐く息の音ぐらいか。 

 

その時だった。

道の向こうからゆっくりと近づく黒影が見えた。

それはまだ遠くにあって

左右に揺れているのが確認できる。

はじめは私の見間違いかとも思った。

しかしその影が近付くにつれて

それが勘違いじゃないということに気付かされる。

私は思わず歩くスピードを落とした。

ぼやけていた影が徐々に輪郭を現す。

それが人だと認識するのにそう時間はかからなかった。

私は集中してその姿を見た。

全身が黒ずくめの恐らくは男。

身長は私よりも大きい。

体重は分からないが

体格差がかなりあるだろう。

フードを被っているのか顔が確認できない。

明らかに異質な雰囲気を漂わせながら

ゆっくりとこちらに近付いてくる。

耳をすませると何やらブツブツと呟いている声が聞こえる。

何を言っているのかは分からない。

 

一瞬いつか起きた通り魔のニュースが脳裏をよぎった。

緊張が背筋を走る。

こんな時代。いつ何があるかは分からない。

襲われるかもしれない。

嫌な考えが先行する。

こちらも進まなければ余計に警戒されるかもしれない。

怖さを覚えながら少しずつ足を前に出す。

一歩ずつゆっくりと慎重に。

徐々に距離が近くなる。

50メートルないぐらいか。

私は思わず拳を握りしめた。

生きてこのかた喧嘩なんかしたことが無い。

がしかし護身術程度であれば心得がある。

男の声が少しづつ大きくなる。

集中。

焦点を男に合わせて動きを伺う。

身体が熱い。さっきまでの寒さが嘘のようだ。

さらにゆっくりと歩を進める。

男は私の左前方。その距離約15メートル。

ナイフでも持っていたらどうする。

左手をゆっくりと胸元へ引き寄せる。

集中。

距離が近くなる。約5メートル。

少し腰を落とす。

右足を半歩出してすぐに左足を出す。

じりじりと距離を縮める。

 

次の瞬間!

男が急に私の目の前に移動してくる!

全身に稲妻が駆け巡ったように悪寒が走る!

一瞬世界がスローになり。

私は目を見開き、呼吸を止める。

男からの攻撃は無い。

チャンス!

拳を握りしめ

回し蹴りを顔面へ!

と身体が反射した時、男は

「あっ。。%★*@△」と聞きとれない言葉をこぼして

何事もなかったかのように私の側を通り過ぎて行った。

 

歩く速度をあげて、急いでその男との距離を取る。

路地を抜ける所で、私は振り返った。

男はずいぶん向こうの方でよろけながら歩いていた。

私は深呼吸した。

握られた手は力が入ったまま震えていた。

私はその手を見ながらため息をついた。

 

ほんとあぁいうのはやめてもらいたい。

出来れば一番遭遇したくない類だよ。

 

小学校の頃の先生の言葉を思い出した。

「帰りはお友だちと一緒に帰りましょうね。」

はい先生。それ間違いないです。